相対性理論には、いわゆる「原理」と呼ばれるものがある。言ってしまおう。2つの原理が特殊相対性理論の根幹であり、すべてである。\(E=mc^{2}\)だとか、時間が遅れるだとかいう話はいつでも原理から導くことができるため、言ってしまえば"蛇足"だ。(逆に言えば原理というのはそういったもののことである)しかし2つの原理を見ただけでは、我々人間にとっては何のことだか分からないし、何かに応用することも難しい。実験で確かめることも厳しいだろう。そこでアインシュタインは、現実で応用できたり実験で確かめたりできるように法則を導いた。今回は原理のみを話し、そこから導かれるものについては次回以降語っていこう。 特殊相対論には、「光速度不変の原理」と「特殊相対性原理」と呼ばれる2つの原理がある。それぞれの内容は 光速度不変の原理 --- 真空中の光の速度は光源の速度によらない 特殊相対性原理 --- 物理法則はどの慣性系でも同じ形式で書かれる 光源というのは光を出すもののことで、懐中電灯や太陽なんかがそれだろう。 慣性系というのは、力が働かず速度一定で動いているような系だ。 光速度不変の原理は、光の速度はその光を出した光源がどんな速度だろうが同じ値で観測されるという原理だ。止まっている光源から出た光が速度\(c\)の場合、速度\(v\)の光源から出た光も、やっぱり光は速度\(c\)となる。 特殊相対性原理は、物理法則は止まって見ようが動いて見ようが同じ形式で書けるという原理だ。ある観測者1から見て、速度\(v\)の観測者2がいる。さらに観測者2から見て速度\(v\)の観測者3がいる。観測者1から見て観測者2は〇△□と物理法則が書けるとすると、同じく観測者2から見て観測者3は〇△□という物理法則で書けるといった感じだ。普通に地面に立ってボールを投げるのと、電車内でボールを同じように投げるのとでは、投手から見て同じように飛んでいくのはなんとなく分かるだろう。 この状態の光速度不変の原理は少しわかりにくいので、特殊相対性原理を使って以下のように書き換えられたものがよく使われる。 真空中の光の速度はどの慣性系から見ても同じ 実用上はどっちを使っても問題ないため、こっちを扱っていこう。 こちらの光速度不変の原理は、マイケルソン-モーリーの実験から考えられる。この実験については後述するが、もし慣性系によって光速に違いが出ると、最も光速が遅くなったり速かったりする慣性系があることになる。もしあれば物理学者はそれを必死こいて探しただろうが、高速の違いはなかったようである。この結果は覆る可能性もあるため、今でも超高精度で実験中である。 特殊相対性原理はガリレイの相対性原理を少し緩める形で作られた。ガリレイは、あの有名なガリレオ・ガリレイのことである。ガリレイの相対性原理は、異なる慣性系(速度が違うもの)同士が変換されるにはガリレイ変換を仮定したが、特殊相対性原理では仮定されていない。ガリレイの相対性原理と特殊相対性原理の違いはそれだけである。上の2つの原理を用いて計算すると、速度の違う者同士の変換はガリレイ変換とは違いローレンツ変換と呼ばれる変換が必要なことが導かれる。あとで計算してみよう。